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まずは経営管理と経営計画の基礎知識から

経営戦略を考えるとかいう前に、まずは経営管理と経営計画のことを知っておきたいですね。何事も基礎知識は大事です。

経営管理の原則

まず経営管理の原則として次のことを知っておきましょう。

  • 科学的管理法
  • 管理過程論
  • マネジメントサイクル

科学的管理法

テイラーの科学的管理法として知られているものです。テイラーは、19世紀末にアメリカの多くの工場に蔓延していた組織的怠慢や成り行き経営に対し、製鉄所の管理者の立場から様々な改革を実施し、多くの功績を残しました。次の導入をしました。

  • 課業管理の徹底と差別的出来高給制
  • 業務組織の改革と職能別職長制

課業管理の徹底と差別的出来高給性

時間研究や動作研究を行い、仕事の成果を客観的に測定するための基準として課業を設定し、それを確立するために4つの管理原則を提示しました。

テイラーは、次の考え方に沿って課業を達成した従業員には高い賃率を適用し、達成できなかった従業員には低い賃率を適用する差別的出来高給制を考案しました。

  • 大いなる日々の課業 ※課業の明確な割当
  • 標準的諸条件 ※仕事の標準化、単純化、専門化
  • 成功に対する高賃金の支給
  • 失敗に対する低賃金の支給

業務組織の改革と職能別職長制

多くの工場で一人の職長がすべての管理機能を一任させているため、過大な負担が生じ、課業の効率的遂行を阻害していると考え、業務組織改革に取り組み、専門化の原則に基づく職能別職長制が考案されました。一人の職長が担当していた管理機能を職能別に分類して各職長は、担当する職能について管理するものです。

これは、現在の経営管理研究の基礎となりました。後のフォードシステムといわれる作業の標準化、移動式組立ラインの導入やトヨタのジャストインタイムといわれるものにつながっていきます。

この科学的管理法は工場内の管理手法として成果を収めましたが、しかし、全体的な管理の視点に欠けていたり、合理性を追求するあまり人間を単なる道具と位置づけ人間性に対する配慮が欠けているといったことが指摘されるようになりました。

管理過程論

ファヨールの管理過程論として知られているものです。ファヨールにより基礎が築かれた管理過程論は、その後多数の研究者に引き継がれています。ファヨールは、30年近く炭鉱会社社長としての経験をもとに企業の活動は6つのグループに分けることができるとして、なかでも管理的活動の重要性について主張しました。

次の6つの本質的活動は、企業が単純・複雑・小規模・大規模であっても常に共通して見いだされるとしています。

  • 技術的活動 ※生産、製造、加工
  • 商業的活動 ※購買、販売、交換
  • 財務的活動 ※資本の調達、管理
  • 保全的活動 ※財産、従業員保護
  • 会計的活動 ※貸借対照表の作成など
  • 管理的活動

これら6つのうち、管理的活動については、他の5つの本質的な活動とは異質なもので、予測、組織化、命令、調整、統制の5つの要素から成り立っています。

  • 予測は、将来を吟味し、活動計画を作成します。
  • 組織化は、企業の物的、社会的な二重の組織を構成します。
  • 命令は、従業員を機能させます。
  • 調整は、あらゆる活動とすべての努力を結びつけて一元化して調和させます。
  • 統制は、すべての事柄が確立された基準と与えられた命令に従って行われるよう注意します。

マネジメントサイクル

マネジメントサイクルは、経営を管理する一連の流れをいい、PDCAサイクルとも呼ばれ、企業経営に欠かすことのできないマネジメント手法です。

企業が活動するにあたって計画(Plan)→実行(Do)→結果を定期的に評価(Check)→活動を修正・見直し(Action)をします。

経営計画

企業が存続、成長するために、変化する環境に適合していく必要があります。それを実現するためのプログラムが経営計画です。

経営計画には、次の役割があります。

  • 経営の指針としての役割
  • 業務遂行の指針としての役割
  • 人材育成、コミュニケーション強化策としての役割

経営の指針としての役割:経営計画は、計画期間における経営目標を設定し、それを実行していくための施策を決め、施策実行のための行動予定を定めたもので、マネジメントサイクルの起点として経営活動の実行結果を評価する基準になります。

業務遂行の指針:経営計画は、組織のメンバーに企業や部門の経営目標を理解させ、業務を遂行する上での指針を与えます。日常的な意思決定のための判断基準としても役立ちます。

人材育成、コミュニケーション強化策としての役割:経営計画の策定プロセスを通じて、策定作業に参加した関連部署の幹部社員や企画スタッフなどの育成を図ることができます。組織感での情報共有や共通認識にも役立ちます。

経営計画の種類

経営計画は、計画対象、計画期間、計画内容の観点から分類できます。

  • 計画対象に基づいた分類
    • 総合計画
    • 個別計画
  • 計画期間に基づいた分類
    • 長期計画
    • 中期計画
    • 短期計画
  • 計画内容に基づいた分類
    • 戦略的計画
    • 戦術的計画

計画対象に基づいた分類の経営計画は、計画の対象領域を基準として総合計画と個別計画に分けます。総合計画は、企業の経営活動全体の計画で個別計画を調整、統合する機能を持っています。個別計画は社内の特定部門、特定職能、特定プロジェクトなどを対象とした計画です。

計画期間に基づいた分類の経営計画はその期間に基づいて長期、中期、短期の計画に分けます。長期計画は、企業の経営目的を達成するための経営戦略を具体化し、計画内容を定期的に見直し、部分的な修正をするローリングプランを活用します。中期計画は、長期計画の実現可能性をチェックしながら短期計画に具体的な目標を提供するという両者の橋渡し機能を持った計画です。短期計画は業務執行的な性格が強く、予算が編成されるのが一般的です。長期計画は5年以上、中期計画は2〜3年、短期計画は、1年以内(年次、半期、四半期など)の期間を基準として策定されます。※ローリングプランとは、経営計画の実施過程で1年毎に計画と実績の差異をチェックして計画策定時に予想できなかった要因でギャップが生じた場合に計画を再編成する技法です。

計画内容に基づいた分類の経営計画は、内容に基づいて戦略的、戦術的計画に分けます。戦略的計画は環境の変化に対応するための経営戦略を計画化し、戦術的計画は日常業務を効率的に運用するための行う執行計画的なものであり、戦略的計画を前提として策定します。

コンティンジェンシープラン

コンティンジェンシープランについても少し触れておきましょう。企業を取り巻く経営環境は、絶えず変化しており、様々な不足事象が顕在化する可能性があります。企業業績に大きな影響を与える不足事象を予め想定し、不足事象の発生時に迅速に対応したり、その損害を最小限にとどめるための複数の対応策を示した計画です。

中長期計画の策定手順

中長期計画の策定により、経営戦略を形にして全従業員に周知することができます。

  • 策定目的の明確化 ※企業の存続と発展のために経営体質強化
  • 策定スケジュールの作成 ※日程、責任者、メンバーを決めスケジュール化
  • 自社の経営状態の現状分析 ※財務面、成長過程、市場評価、企業風土などから分析把握
  • 事業分野の検討 ※現事業分野が将来の存続発展を見極め再設定
  • 成功要因の明確化と経営方針の策定 ※市場予測、競合他社の戦略、成長予測から成功要因の明確化→経営方針策定
  • 計画目標の設定 ※業界ポジション、売上水準、売上構成、仕入先、取引条件、従業員などの目標設定と阻害要因把握、対応策具体化
  • 目標達成のための施策立案 ※目標達成するための施策立案と人材育成確保具体策
  • 経営改革書の作成と発表機会の確保 ※計画作成し発表
  • 経営統制の実施 ※統制システム構築、実行(業績測定、目標値と比較/目標値と実績値の差異分析/差異の原因是正)

中長期計画の活用

計画を策定しただけでは、意味をもちません。作成した計画を確実に実行に移すための管理体制が必要です。

  • トップによる率先垂範
  • 計画のタイムリーな見直し
  • 徹底したフォローの実施

計画を経営に生かせるかどうかは、トップが牽引力を発揮し、取り組み方次第で決まります。また時間の経過とともに計画と実績が異なってきます。一定期間ごとに見直し修正が不可欠になります。計画を実行し効果を出すためには、フォローミーティングなどを実施し問題が生じた場合に解決に向けた働きかけも重要になります。

まとめ

経営管理の原則としてテイラーの科学的管理法とファヨールの管理過程論、PDCAサイクルを知っておくと良いでしょう。今回は、ざっくりとした内容でしたのでもう少しご自身で深堀りされると良いですね。

経営計画は、経営目標を設定し、それを実現していくための策定をし、施策実行の行動予定を定めたもので、総合、個別の計画対象、長期、中期、短期の計画期間、戦略、戦術の計画内容の観点から分類します。目的を明確にして策定し、計画通りに実施するためには経営統制の仕組みが必要です。

まずは、これらの基礎を知った上で経営戦略策定に進むべきですね。やはり基礎知識は重要です。

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